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トップページ >> 既刊・新刊 >> 河口慧海著作選集 3 >> 苦行詩聖ミラレパ―ヒマーラヤ山の光

苦行詩聖ミラレパ ヒマーラヤ山の光 河口慧海著作選集 第3巻

「苦行詩聖ミラレパ」書影
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河口慧海・著 (ツァンニョン・ヘールカ:原著)
日高 彪・校訂(改訂新版)
A5判・上製クロス装・函入・212ページ 2010年3月刊
定価:5700円+税 ISBN978-4-86330-036-1

チベットの聖者ミラレパの本格伝記!

苦境の生い立ち、母の復讐心、妖術への傾倒…やがて魂の師父と出会い、極限の苦行を経て至高の聖者に…
チベット仏教4大宗派の1つカギュ派の聖者にして、チベット古典文学を代表する詩人としても広く愛されるミラレパ。その数奇な生涯と求道の遍歴、そして孤高の境地が詠み込まれた珠玉の詩作を、読みやすく再編! 名僧ツァンニョン・ヘールカの著したチベットの古典『ミラレパ伝』を原典として、日本人初のチベット留学者・河口慧海による本邦初訳!  チベット学、仏教・密教学、ヨーガ学に必携!

ミラレパ Milarepa (mi la ras pa)

チベット仏教の行者、詩人(1052-1135)。チベット、ツァン地方南部キードン県の地主の家に生まれるが、父の死後、 後見人となった叔父によって母子ともに虐待を受ける。狂気に陥った母の命を受けて黒魔術を学び、叔父一族に復讐を果たすが、悪行を悔いて修行者となる。インドより新訳経典を将来したマルパ訳経師に師事し、密教の血脈を相承。山野で苦行に励み、各地を放浪して多くの宗教詩を歌い上げた。その詩はチベット人の間で広く親しまれ、ミラレパの法統はチベット仏教4大宗派の1つカギュ派として受け継がれている。

著者略歴

河口慧海(かわぐち・えかい) 1866-1945
仏教学者、僧侶。大阪府堺市生まれ。哲学館(現・東洋大学)、黄檗山万福寺に学ぶ。大乗仏教の原典を求め、1897年よりインド・ネパールを遍歴の後、単身チベット探検を敢行。1901年(明治34年)日本人で初めてチベットの首府ラサに到達する。1913年(大正2年)2度目のチベット入りを果たし、ネパール伝サンスクリット(梵語)仏典、チベット大蔵経等を将来する。帰国後、大正大学教授。我が国の西蔵学(チベット学)・印度学(インド学)の先駆として活躍。著書『西蔵旅行記』(チベット旅行記)は現在まで広く読み継がれている。

原著者:ツァンニョン・ヘールカ (1452-1507)
Tsang Nyon Heruka (gtsang smyon he ru ka)
チベット仏教カギュ派の僧。法名サンギェ・ギェルツェン。風狂の密教行者すなわち「ニョンパ」として知られる。ミラレパをはじめとする先師の聖跡を巡って修行し、『ミラレパ伝』の他、『マルパ伝』などを著す。

本書序文より(抜粋)

 チベットでは面白くて悲惨で有難い伝記と云えば必ず第一にミラレェパの伝記が挙げられる。また寺院村間の説法題目として最も多数に人の集まるものはミラレェパ伝の法話である。そうしてミラレェパ自身の談話や詩句中にはその表現法に一種の強い魅力があって人を恍惚たらしめるのである。これがチベット人の心を引きつけるものであろう。特にその伝の変化の極端なることも大いに力あるものであろう。また尊聖ミラレェパはチベット人一般の理想的全人格を表わしているので、特に彼らが心底から同意が湧き出すにも因るのであろう。山陰山国民の常として怨を報ゆるにも主として陰的手段の呪術などによって、極端に徹底して復えすが如き、また法を修むるに当たってもチベット人一般の最短所である物件執着心を極端に破棄する実修の如き、これ皆チベット人の歓呼讃歎する所である。
 さればミラレェパ伝の研究は主としては、いかに一般罪悪の人々が雪山仏教によって、解脱を得らるるかの方法を示すに止まらず、他の一方においては、チベット人一般の風俗習慣より生活の情態並びに彼らの考え方や宗教心に至るまでの全人格の研究に資するものである。
 余はかつて我がチベット学研究生等の依頼に応じてミラレェパ伝の全部を翻訳したことがある。それはチベット語研究のためにほとんど直訳したので、その中に仏教及び密教の専門語が非常に多いために専門家でも一読で解するに困難あることを発見した。時に吾が在家仏教修行団の諸姉妹は婦女子並びに児童等のためにこれを解り易く著してくれというむつかしい請求をせられたので、余はヒマラヤ山の山精神と、チベットの宝玉を世に紹介する意味において、出来るだけ了解しやすく著述したのが本書である。その著と云うべき点は、本書の始めの一章と終わりの一章である。これはチベット文をいかに解し易く翻訳しても、チベット密教特に勅命系統派の奥義に深く通じたものでなければ、了解し難い術語の羅列であるから、全然それに依らずに、雪山仏教の大意に随順して、余自ら構成したものである。その述と云うべき点は他の二十四章であって、これは大抵原本に随順して述べたものであるから原本研究者にも参考となるであろう。また元来原書は仏の十二行相に倣って章を十二に分ったものであるけれども、それに随っては章の特質を表すことが出来難い故に原文に表われた章段特質に随って章を二十六に分ってその各章の特質に随ってその名を附けたものであることも断っておく。

目次

一 雪山国の全景と宝玉
二 尊聖(ジェツン)ミラレェパの系統及びその誕生
三 惨苦に悩む母子三人
四 呪術即ち魔術の修行
五 怨敵絶滅の荒業
六 出離の心で大善智識を尋ね求む
七 教師の命を奉じて数度の築城
八 求法のための煩悶
九 絶望的苦痛によって罪障消除す
一〇 黙想の転機は苦難を幸福に変ず
一一 修定の結果了解の芽を出す
一二 悲惨なる出来事の予知から悲痛なる告別
一三 郷里の頽敗と出離の決心
一四 郷里における敵味方の迫害と同情
一五 護馬白巌窟の蕁麻苦行
一六 変わり果てたる兄妹の会遇
一七 妹の強要と苦行の金剛心
一八 伯母の化度
一九 説法会における二大弟子の教導
二〇 雪山諸巌窟霊場における化度
二一 博士ツァク・プフワが尊者に毒を進む
二二 尊者入滅の予言と信者の集会
二三 ミラレェパ最後の痛切なる教導
二四 博士ツァクプフワの徹底的懺悔
二五 尊者最終の地、水燃に移って遺言
二六 雪山尊者入滅の雲

(原書名『苦行詩聖ミラレエパ―ヒマーラヤ山の光』)

「河口慧海著作選集」推薦文  チベット文化研究会会長 高山龍三

百年余前、チベット探検僧としてもてはやされた河口慧海、一年余で再渡印、インド、ネパール、チベットに計一七年も滞在、仏教、チベット語、梵語を学んだ。帰国したときは五〇歳、彼の研究と著作はその後に始まる。あまりにも有名な『チベット旅行記』のみ取りあげられるが、日本におけるチベット学の祖として、請来した経典の翻訳、研究、チベット語学生の養成、未完に終わったが辞典編纂につとめた。慧海を扱った本や論文は日本だけでなく、中国、欧米にも及び、増え続けている。彼の仏教思想は改めて現代に問い直されている。彼は学究としての道をとらず、また僧としての地位に安住せず、行動する真の宗教者として一生を終えた。彼の請来した文献や多方面にわたる文物は、公共の機関に所蔵され、チベット文化研究に貢献した。そのいくつかの著作は復刻されたが、ここに現代人が読みやすいように、書籍化されるようになったのは、幸せなことである。

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