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江藤淳氏の批評とアメリカ―『アメリカと私』をめぐって
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廣木寧・著
四六判・並製・カバー装・484ページ 2010年4月刊
定価:本体3000円+税 ISBN978-4-86330-040-8
江藤淳の作品と戦後文学を通じて見つめる
日米文化論!
第二次世界大戦終結とそれに続く「冷戦」、そして目まぐるしい時代の「変化」のさなかに日米両国が置かれていた1960年代。米国プリンストン大学で日本文学の教鞭を執り、周囲から高い評価を受ける一人の日本人研究者がいた。若き日の江藤淳、その人である。江藤の渡米記『アメリカと私』には、当時のアメリカでの体験を経て日本人としての自己を再発見してゆく自らの心境が綿密に綴られている。本書は、この江藤淳著『アメリカと私』を深く読み解きながら、そこに福田恆存・庄野潤三・火野葦平らの作品と人生を交錯させつつ、文学者のみならず「戦後日本」にとっての「アメリカ」の存在と意味を深く追究する。著者渾身の作家論・文学論・東西比較文化論にして、戦後史論ともいえる快著!
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「江藤淳のアメリカ体験に見る日本の禍機」 ――東京大学名誉教授 小堀桂一郎・評
停戦後七年に近い米軍による軍事占領が戦後日本の禍多き運命を決定した。この運命と対決し苦闘した知識人の代表的存在が江藤淳氏である。後年占領期の研究に心血を注ぐ事になる江藤氏の運命が実は日本の運命の写影である構造を、廣木寧氏は『アメリカと私』の分析を通じて見事に描いて見せた。この書は、一文学者の文業への批評を超えて、国家と国民の禍機を見通す深い洞察の成果である。 |
著者略歴
廣木 寧 (ひろき やすし)
昭和29年、福岡市生まれ。九州大学卒。東京でのサラリーマン生活の後、福岡に戻り、学習図書の出版販売会社の教育事業部に勤務。現在は学習塾を経営。平成12年から文芸評論や日本思想の同人誌「正統と異端」を発行、夏目漱石、小林秀雄、江藤淳氏などについての論攷を発表している。 |
目次
第1章 アメリカとは何か
1 若き日の江藤淳氏に見られる敗戦によるアメリカ忌避の心情
2 日本の敗戦に同情的な南部アメリカ人フォークナー氏の南北戦争観
3 日本の敗戦と二重写しになる北軍による南軍の戦後処理
4 庄野英二氏の短編小説「相客」に描かれた被占領時における日本国民の精神状態
7 福田恆存氏の日本近代史観及び朴正煕大統領との友情
14 巣鴨プリズンに拘留された軍人軍属の獄中生活と彼らの精神状態
15 被占領時における不当なる軍事裁判の犠牲者、由利敬陸軍中尉
・由利敬陸軍中尉の母親ツル刀自の手紙
・由利敬陸軍中尉の遺書
23 巣鴨プリズンから移送される収容者達の心を弄ぶアメリカ兵
24 香港に移送されて裁かれた矢野元少将の手記に見る英国人の残忍
25 プリンストンの書斎で流れる江藤氏の涙
第2章 アメリカでの江藤淳氏
1 渡米当初、社会的な死を体験していた江藤氏
2 4つの事件を機に恢復に向かう江藤氏
(1) 連邦政府と州の「力」と「力」が激突したミシシッピ州立大学における黒人学生拒否事件
(2) 「キューバ危機」の中で祖先が戦った日露戦争当時の日本を想起
(3) プリンストン大学における学会での発表後、参加者が言った「”不安な巨人”日本」
(4) 江藤氏の『小林秀雄』が新潮文学賞を受賞
10 社会的な死を体験していた頃に出会った氏の影絵のような3人の人物
(1)ニューヨークで絵画を2年間勉強している日本人の青年
(2)イタリア系移民二世ビル・バランボウ氏
(3)日本文学の担当で漱石研究家のヴェリエルモ助教授
11 米国留学によって戦前戦中戦後を貫く「自己同一性」を恢復
12 「小林秀雄に関する紹介的ノート」と題する学内講演会の成功
13 サイデンステッカー氏等米国の著名人を前に行なった講演の成功
<この講演内容は後に「近代日本文学の底流」と題して発表>
14 真珠湾攻撃を話題にする老未亡人のアール婦人
15 追いつめて日本に真珠湾攻撃を仕掛けさせた米国の策略
16 真珠湾攻撃の3時間55分前に戦争勃発の時刻を握んでいた米国政府
17 最重要の情報を知らされていなかった太平洋司令長官キンメル
18 真珠湾の「奇襲」は「卑劣」で「破廉恥なだまし討ち」か?
・真珠湾攻撃1時間前に起こっていたアメリカ駆逐艦による日本潜水艦撃沈
・日本と交戦していた中国に軍需品の形で援助を行っていた米国
・「敵に不意打ちをすること」を認めたショート将軍
19 日米戦争の悲劇に至る米国による通信傍受
・歪曲され、誤解を招くような米国側の通信文翻訳
22 『ハル回顧録』に見られる浅薄皮相な人間観を持つ外交官ハル
23 日米首脳会談に活路を見出そうとする近衛首相の動きとその挫折
24 自殺した近衛氏が最後に読んだワイルドの本に棒線が引かれていた箇所の意味
25 白人に非西洋の人間として峻拒される江藤氏
27 国を異にする二世同士の結婚に見る複雑な家族関係
28 プリンストン大学で始まった江藤氏の充実した教師生活
29 「詩が解らない」と言う学生に対する江藤氏の返答
30 ケネディー大統領の死とその知らせに対する人々の受け止め方
31 ケネディー大統領について朝日新聞の社説と江藤氏の異なる評価
32 大統領の死を悼む米国人の姿を見て自国の歴史に帰る江藤氏
33 暗殺容疑者のオズワルドについて議論をする教室の学生達
34 エール大学とハーバード大学での講演が決定 タイトルは "Natsume Soseki, A Meiji
Intellectual"
35 平野謙氏に「独創的」と高く評価された江藤氏の最初の「夏目漱石論」
36 漱石について書くことを奨めた「三田文学」編集長、山川方夫氏の友情
37 孤独な少年時代に義祖父日能氏と出会い、開かれていく江藤少年の心
38 母親の死による喪失感が強いた江藤氏の早熟
39 江藤氏にとって夏目漱石の理解が容易く行われた理由
42 エール大学での講演で完成した江藤氏の『心』論
43 主張することによって米国社会に受け入れられる江藤氏
44 アメリカ社会が外国人を同化する強力な「力」
45 エリート大学で学生が起こした暴動についての考察
47 明治の選良達と昭和の江藤氏の留学内容の違い
49 日本を貶したドイツ人に対してスピーチをして一矢報いた鴎外の気概
50 かつての日本にあった国家から個人に発せられる強力な義務の要請
51 異国での全身が震えるような母国語体験
52 日本語を守るために日本に帰る決心をする江藤氏
53 マリアス・ジャンセン家の人々との別れ
第3章 アメリカでの江藤淳氏夫妻 |
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