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西蔵文化の新研究  近代チベット史叢書 10

西蔵文化の新研究
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青木文教・著 日高彪・校訂
A5判・上製クロス装・函入・216ページ 2015年5月刊行
定価:7000円+税 ISBN978-4-86330-053-8

神代の昔から戦乱の近代まで、上流文化から庶民文化まで、西蔵(チベット)に魅せられた日本人が語る!

チベットの国旗をデザインした男、青木文教。鎖国下のチベットで仏教学者として研究をし、ダライ・ラマ13世と親交を持った彼は、第二次大戦中に外務省調査部嘱託職員としてチベット問題の研究を行った。本書は後に東京大学の講師になる彼が、チベットの地理・歴史・言語・民族・宗教・風習などを網羅的に語った著作である。神代の昔から英国・ロシア・中国の間で揺れ動く当時の激動の状況まで、チベットの姿を克明に描き出している。補遺として「ダライ十三世と東亜の変局」「最初の国法」「西蔵大蔵経」などを収録。

「近代チベット史叢書」推薦文  小峰彌彦大正大学学長・仏教学博士)

 2009年は、1959年のチベット民族蜂起より50年の年にあたる。昨年の北京オリンピックの折りにも解放問題をめぐり、世界各地で解放を望む運動が顕在化したことは記憶に新しい。とはいえこの問題も、決定的な武力紛争までいたらなかったこと、さらには中国への配慮なども影響し、日本においての関心はそれほど高くなるには至らなかったのが現況である。だが、チベット問題は、当該の民族のみのことではなく、国際的にも重要な課題であることは間違いない。それ故、私たちはこの課題に真剣に向き合う必要があるが、そのためにはチベットに対する基礎的な知識を備えた上の正しい認識が不可欠となるのである。
 本叢書は「20世紀初頭から第二次世界大戦に至るチベットの歴史と民族文化」を学ぶ基礎的な資料としても重要であるし、チベット問題の原点を考察する上で貴重な材料を提供している良書である。青木文教氏をはじめとする著者の体験を通しての報告は、読者に多くの知識と示唆を与えるものと確信するものである。

著者略歴

青木文教(あおき・ぶんきょう)
チベット研究者、僧侶。滋賀県安曇川町生まれ。仏教大学(現・龍谷大学)大学院在学中に大谷光瑞の秘書となり、仏教遺跡の研究に従事。大正元年(1912)より5年間チベットの首府ラサに滞在し、ダライ・ラマ13世と親交を持つ。1941年から終戦まで外務省調査部嘱託職員としてチベット問題研究に従事。戦後は東京大学講師などを務め、チベット語を教える。(1886-1956)

目次

第一章 緒 論
一 西蔵学の研究問題とその方法―本記の特質
二 西蔵原語の記法―文語と口語併記の必要
第二章 国名の解説
一 国名解説の意義
二「西蔵」の名の由来―命名の事情―烏斯蔵の義
三 英語Tibet の語源―同原語の意義
四 漢語の諸名、てい(氏の下に棒一本)・羌―西戎―西羌―附国―発羌―吐蕃―禿髪―党項―西蕃―その他
五 霊魂の国―プル王国
六 雪有国―雪山群国
七 神国―神聖国―仏法保有刹土―有仏法国
八 中 国……
九 米実る国―穀物豊饒国
十 プュッ国=固有の本名“Bod” ― Bhot-phod-Buddha ―「感叫国」―ボテェー国―その他
第三章 地理概説
一 西蔵国の所在感―支那と印度との比較
二 国の版図―位置―面積―海抜―地勢―地表状態等
三 気候―拉薩の気象
四 都邑―人口―交通―産業貿易
五 行政―中央と地方
第四章 民族の由来
一 民族の分類
二 西蔵人種の起原
三 容貌上の分類
四 中亜ホル人種系の特質
五 ホル人種の発祥地―その発展範
囲 六 遊牧種と定住種
七 西蔵人種とその民族論の帰結
第五章 太古の洪水説
一 往昔入蔵印度人の説
二 仏典所説よりの想像説
三 一局地的の洪水説
四 地文学的推測の可能性
五 洪水説の証跡―文献上の考査
六 洪水思想と民族
第六章 建国説話
一 建国の意味
二 説話の分類
三 天神降臨説
四 印度王族来臨説
五 仏教説話
六 仏話の考察
七 仏話とボン神教
第七章 国史略説
一 国史の取り扱い方
二 建国の年代推考
三 伝説時代、王統継承の模様―特記事項
四 史実時代、仏教文化の伝来―飛躍の大発展
五 国史と仏教、王統の分裂
六 諸侯割拠―教派の抗争―蒙古の制覇
七 仏教改革―法王時代―教権と君主権
八 支那の属領となる―清朝と西蔵
九 英露との新関係に入る―英蔵事変
十 支蔵事変とその結果
第八章 古代の凡神教
一 ボン神教の新旧別
二 シャーマン教との関係、「ボン」の意義
三 旧ボン神教の特質―伝播状態
四 新ボン神教の儀容―ボン仏両教の関係
五 「ボン」の信仰―ボン神司
六 「ボン」の天国、神器の天縄―神飾の天縄―神幟
七 神飾のある風景―伝説を偲ぶ古代情緒
第九章 仏教の伝通
一 伝来の時期―伝来直前の状態
二 仏教移入と国王の事蹟―ラッサ奠都―支那と印度への遠征―新文化の建設―
文字と文法の制定―仏教採用―経典翻訳―国法の創制―
支那とネパールの王女を娶る―仏殿建立―「ラッサ」の名の起原
三 初伝仏教の興起―聖僧の出現―最初の蔵経目録
四 大蔵経経典用語の校訂と統一
五 仏教破壊―初伝仏教の終末
六 仏教復興―後伝仏教の興起―諸教派の対立
七 教界の堕落―仏教の改革―新教の興隆
八 法王位制の創始―「ダライ」の起原―教皇権の獲得―宮殿の大増築
九 近世の仏教―退歩の傾向
第十章 性情と風習
一 原始時代と文化時代―欧西人の観察模様
二 残忍性の有無―欧西人危害の真相―異人種異教徒に対する感情と態度
三 個性の観察―矛盾の特性
四 風習―衣服の種類―我が国古代風俗との比較
五 家屋の構造―屋内の仕組
六 座席の特色―我が畳床との比較―坐り方
七 食事―主食物と副食物―種類と喰べ方
八 習性―不潔と迷信
九 冠婚の奇風―元服―一妻多夫の遺習
十 葬法の異習―遺骸の取扱法と処置
十一 年中行事の特色
 
第十一章 言語の特性
一 西蔵語の概念
二 無文字時代
三 文字と文法の制定―八編の欽定文典
四 現存二編の原文典―文法解説書
五 欧西人の文法書
六 西蔵語の起原考察
七 口語と文語の由来―その区別法
八 発音の原則―文字の音性
九 「語」の発音法
十 口語の発音―文語との相違
十一 発音法に関する謬見
十二 漢語との関係の有無の考察
十三 漢語の影響観―四声法―平仄法―字即語
十四 日本語の文字及び語の形態及び性質の比較
十五 日本語の一般的性質との同異点の比較
十六 日本語との語源的関係の臆測
第十二章 西蔵学とその資料
一 西蔵学の現段階
二 支那所伝及び西蔵固有の文献
三 文学に関する文献
四 欧西人らの各種著述
補  遺
第一項 ダライ十三世と東亜の変局
一 国史上の地位
二 英蔵事変―支那亡命―日本仏教徒との提携
三 支蔵事変―排支親英の傾向
四 支那とイギリスに対する感情
五 外国仏教徒の扱方、日本と留学生の交換
六 英蔵事変と日露戦役
七 日英同盟と西蔵問題
八 ロシアの失望とイギリスの幸運
九 執拗なるロシアの余勢
第二項 年暦算出法
一 蔵暦年法と干支法との比較
二 印度のブリハスパティチャクラ法の採用
三 ラプチュン年制の年代算出法
四 上世の年代
五 伝説時代の年代
第三項 最初の国法
一 所謂国法の性質
二 国法の文献
三 国法文の考察―「至尊」の意義
四 国法文の教勅的なる所以
五 国法発布の場所
第四項 ダライ法王の冊立法
一 法王位継承の教理―転生再現者の撰定―継承者の決定
二 法王の空位期―「王者」の撰任―その資格
三 継承に関する血脈と霊統との観念
第五項 建国記念祭
一 「神人天縄滑降」祭―建国祭
二 祭典の模様―国の運命占卜
第六項 西蔵大蔵経
一 「カンギュル・タンギュル」の意義
二 大蔵経の内容分類―西蔵訳本の真価
三 最初の蔵経目録―経典用語の改訂と統一―新制語とその文法
四 大蔵経の印刷
第七項 六字呪文
一 六字呪文の発音とその意義
二 六字呪文と観音との関係
三 呪文の深義と功徳、「南無阿弥陀仏」との比較
第八項 ダライ及び班禅の語義
一 「達頼」の名の意義と由来、ダライ法王の尊称
二 「班禅」の名の意義と由来、パンチェン法王の尊称
三 ダライとパンチェンの資格
第九項 ラマの語義
一 「ラマ」の意義
二 「ラマ」の由来
三 「ラマ」の誤用
四 「ラマ」教の名称
五 「ラマ」の誤訳について
第十項 西蔵文字
一 文字の序列―字母表
二 字母の意義―字即語
第十一項 西蔵の象徴
第十二項 結論に代えて

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