序章 茶の湯の歴史における家元の存在
第一節 現代における家元とは
第二節 家元に関する先行研究
一 家元研究の展開
二 家元研究にみる近現代の家元
第三節 近世の茶の湯家元のあり方
一 茶の湯家元の特殊性
二 茶の湯の歴史にみる二つの茶の湯文化の存在
三 流派と何か
四 茶の湯における近世家元システム
第一章 家元と天皇との距離―献茶にみる家元の社会的地位の変遷―
第一節 指標としての「天皇との距離」
第二節 近世における茶の湯と天皇―千家にみる「天皇への志向性」―
一 「天皇への志向性」の源流としての禁中茶会
二 「天皇への献茶」の“復活”とその実態
第三節 「天覧」にみる明治期の家元の姿
一 明治期の「貴紳の茶の湯」と「流儀の茶の湯」
二 井上馨邸における「天覧茶会」にみる家元の姿
三 明治期の行幸・行啓における千家家元の姿
四 明治期における家元の自己認識
第四節 近代における「貴紳の茶の湯」―松浦家の茶の湯―
一 「大名茶」そして「貴紳の茶の湯」としての鎮信流
二 松浦詮と「貴紳の茶の湯」
三 松浦詮と「流儀の茶の湯」
四 その後の松浦家の茶の湯と「天皇との距離」
第五節 大正・昭和初期の家元―独立の存在として認められる家元―
一 家元による「皇族への献茶」
二 「皇族への献茶」の背景とその意味―期待される、新たな“皇室の藩屏”―
第六節 第二次世界大戦後の家元―茶の湯の世界の頂点に立つ家元―
一 存在感を失う華族階級―前田家と裏千家との逆転劇―
二 代償としての家元批判
三 近代の家元から現代の家元への展開
第二章 明治前期の喫茶文化の状況―「貴紳の茶の湯」と“中小流派”―
第一節 茶の湯の復興における“明治十年”
第二節 有栖川宮幟仁親王にみる喫茶文化
一 有栖川宮幟仁親王と喫茶および茶の湯
二 明治前期の茶会にみる有栖川宮幟仁親王の交際関係
三 有栖川宮幟仁親王の茶の湯をめぐる新たな動向
四 茶道具への関心の深まり
第三節 東久世通禧にみる喫茶文化
一 東久世通禧の人物像
二 東久世通禧と茶の湯
三 東久世通禧における明治前期の茶の湯
第四節 「貴紳の茶の湯」にみる“中小流派”の家元たち
一 明治期の「流儀の茶の湯」の状況
二 幕末・明治期の宗徧流のあり方
三 「流儀の茶の湯」における貴紳の位置付け―“家元を預かる”―
四 小川流煎茶にみる家元のあゆみ
五 久田流にみる“中小流派”のあゆみ
六 「貴紳の茶の湯」から、中小流派をふくむ「流儀の茶の湯」へ |
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第三章 創られる家元―流派が “家元”を要求する―
第一節 近代における中小流派の状況
一 近世家元システムを構築していなかった流派
二 女性家元の登場
第二節 大正十二年の宗徧流における「流派統合」
一 「流派統合」以前の宗徧流
二 山田宗有による宗徧流の「流派統合」
三 山田宗有の宗徧流への批判と課題
第三節 昭和初期の石州流における「流派統合」
一 「流派統合」以前の石州流
二 片桐家による石州流の「流派統合」とその批判
三 石州流の「流派統合」の評価
第四節 昭和三十八年の有楽流における「流派統合」
一 「流派統合」以前の有楽流
二 織田家による有楽流の「流派統合」とその問題点
三 有楽流の「流派統合」の評価
第五節 川上不白系流派における流派の継承
一 川上不白系流派の第二次世界大戦後の復興
二 石塚派の復興とその問題点
第六節 「流派統合」の論理
第四章 第二次世界大戦後における茶の湯イメージの転換
―裏千家千宗興の渡米が意味するもの―
第一節 いまだ脆弱さのある家元システム
一 第二次世界大戦後の混乱期における家元
二 当時の裏千家の組織力
第二節 裏千家の二つの機関誌の併存―伝統志向と改革志向―
一 『茶道月報』と『淡交』との志向のちがい
二 『淡交』にみる新たなメディアへの関心
第三節 裏千家の国際化への志向
一 国際茶道文化協会の設立
二 千宗興の渡米
三 千宗興渡米の“国内的”効果
第四節 “新たな”伝統的価値への回帰
一 皇太子明仁親王への献茶
二 新しくて古い茶の湯イメージ
第五章 千宗旦の出自をめぐる「利休血脈論争」―貴種化する家元―
第一節 家元の正統性としての「血脈」
一 千家の初期の系譜をめぐる問題
二 学問としての茶の湯研究と「利休血脈論争」
第二節 「利休血脈論争」とその問題点
一 「利休血脈論争」の経緯
二 「利休娘実子説」に肯定的な三つの資料
三 「利休娘実子説」に否定的な資料(一)
四 「利休娘実子説」に否定的な資料(二)
五 「利休娘実子説」の根拠の脆弱性
第三節 「利休血脈論争」の意味と評価
一 議論の混乱の原因―近世における千家関連資料の潤色―
二 「利休血脈論争」の意義
三 貴種化する家元
終 章 まとめと課題
第一節 本研究のまとめ
第二節 のこされた課題
一 なぜ家元に権威が認められるのか
二 新たな家元の現代史がつくられつつあること
あとがき
索引 |