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青木文教・著 A5判・上製クロス装・函入
定価:本体8000円+税 2016年6月13日刊行
ISBN978-4-86330-168-9 C0322 272ページ
「秘密の国」を克明に記録した貴重文書!
チベットの首都ラサに交換留学し、そこでダライラマ13世の教学顧問としてチベットの近代化にも携わった青木文教。彼はラサの事物を観察し、克明な記録を残した。チベットの伝統的な生活はもちろん、近代化政策の中で変わりゆく社会の様子や、チベットを取り巻く国際情勢などについても詳説。チベット軍の再編や、文教のデザインによるチベットの国旗(雪山獅子旗)の制定に関する顛末なども含む。近代チベットを論じるための必須文献!(現代的表記の改訂新版)
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◆予が初めてダライ法王に謁見したのは明治四十三年で、その後印度と西蔵で幾回となく謁を賜い、駐蔵三年間常に異例の厚遇を被った。法王と予との関係は既述の如く、法王がその高弟たる僧正を我が本願寺に派遣留学せしめたのに対して、予が法王の許に遊学したのであるから、予の修学の成否は幾分法王の責任に帰するのであるが、実際は斯様に窮屈な関係ではなく、単に法王の賓客――寧ろ食客という方が適当かも知れない――としてラッサの都に身分不相応な住所と手当とを支給せられ、国語に熟達するまでは特命によって家庭教師をも附せられた。
予はその鴻恩に酬ゆる為め、時々法王の下問に答え、内外の諸新聞によって海外の重要事件につき奏上し、あるいはその記事を翻訳して奉呈するの義務があった。(本書より抜粋)
◆当時ダライ法王が最も切に希望せられたのは、西蔵の新制軍を訓練すべき教官を日本より招聘することであった。それは現時の蔵兵訓練に採用せる支那兵式は、その源を日本の兵制に発して居ることに意を留められた結果である。予は日本政府が直にこの要求に応ずべきや否やは疑問であるが、ダライ法王の希望としてその筋に報告することは差し支えなき旨を述べた。すると法王から日本の陸軍にて使用して居る各種の教範操典類を全部揃えて寄贈せよとの依頼があった。予は直に某方面に注文を発し、その等が全部法王の手許に達したのは約五箇月の後であった。而してその中第一に翻訳を始められたものは歩兵操典であった(本書より抜粋)
「近代チベット史叢書」推薦文 小峰彌彦(大正大学学長・仏教学博士)
2009年は、1959年のチベット民族蜂起より50年の年にあたる。昨年の北京オリンピックの折りにも解放問題をめぐり、世界各地で解放を望む運動が顕在化したことは記憶に新しい。とはいえこの問題も、決定的な武力紛争までいたらなかったこと、さらには中国への配慮なども影響し、日本においての関心はそれほど高くなるには至らなかったのが現況である。だが、チベット問題は、当該の民族のみのことではなく、国際的にも重要な課題であることは間違いない。それ故、私たちはこの課題に真剣に向き合う必要があるが、そのためにはチベットに対する基礎的な知識を備えた上の正しい認識が不可欠となるのである。
本叢書は「20世紀初頭から第二次世界大戦に至るチベットの歴史と民族文化」を学ぶ基礎的な資料としても重要であるし、チベット問題の原点を考察する上で貴重な材料を提供している良書である。青木文教氏をはじめとする著者の体験を通しての報告は、読者に多くの知識と示唆を与えるものと確信するものである。 |
著者について
青木文教(あおき・ぶんきょう)
チベット研究者、僧侶。滋賀県安曇川町生まれ。仏教大学(現・龍谷大学)大学院在学中に大谷光瑞の秘書となり、インドで仏教遺跡の研究、ロンドンで教育事情の研究を行う。大正元年(1912年)にダライラマ13世より「トゥプテン・タシ」のチベット名を受け、入蔵を許可。大谷光瑞の後援も受けてチベットの首府ラサに留学。文法学や歴史学などを学ぶ傍ら、ダライラマ13世の教学顧問として近代化のための助言を行う。大正4年(1915年)に僧院での学びを終え、ダライラマ13世よりサンビリクト(別名パンディタ)の学位を受ける。1941年から終戦まで外務省調査部嘱託職員としてチベット問題研究に従事。戦後は東京大学講師などを務め、チベット語を教える。(1886-1956)
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目次
序( 大谷光瑞)
自序
第一編 入蔵記
第一章 入蔵の動機
第二章 入蔵の好機来る
第三章 いよいよ入蔵を決行す
第四章 ネパール内地の山旅
第五章 西蔵国境に近づく
第六章 いよいよ西蔵国内に入る
第七章 後蔵の都シガツェ府
第八章 ダライ法王の一行に会す
第九章 法王の行宮に於ける三ヶ月
第十章 西蔵の首府ラッサに入る
第二編 西蔵事情
第一章 西蔵地理概説
第二章 西蔵の対外関係
第三章 ラッサ及びその起源
第四章 ラッサ観察記
第五章 ポタラ宮城拝観記
第六章 ラッサ附近の名所
第七章 西蔵の国柄
第八章 西蔵政府の組織
第九章 西蔵の宗教
第十章 西蔵の教育
第十一章 西蔵の産業
第十二章 交通の状態
第十三章 西蔵の軍備
第十四章 人情風俗
第十五章 年中行事
第十六章 ラッサの三年間
第三編 出蔵記
第一章 ラッサを去ってギャンツェに向かう
第二章 ギャンツェとシガツェ
第三章 チュンビ渓を経て西蔵領土を離る
第四章 スィキム国内の放趣
跋 西蔵遊記(榊亮三郎) |
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