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トップページ >> 既刊・新刊 >> 日本近代図書館学叢書 >> 図書の選択 理論と実際

図書の選択 ―理論と実際 (日本近代図書館学叢書第6巻)

図書の選択・書影
書影:クリックで拡大表示

著者:竹林 熊彦
ISBN978-4-86330-179-5 C0300
定価:本体6000円+税 256頁
A5判・上製クロス装・函入 2017年12月刊行予定

これが図書の選択という"art"(技術)だ……!!

司書の大きな役目は、図書館が購入する図書の選択。
しかし、様々な利用者のニーズを満たすことの困難さに向き合いながら、限られた予算の中で、具体的にどのようにすればいいのか?
選書という一種の「検閲」と、「図書館の自由」の兼ね合いとは。
図書館が図書館であるために、また司書が司書として奉仕するために、何をすればいいのか。
図書館学の大家・竹林熊彦に学ぶ「選書」の理論と実践!

日本近代図書館学叢書ついに完結!

著者略歴

竹林熊彦(たけばやし・くまひこ, 1888−1960)
図書館司書、西洋史学者、図書館学者。千葉県に生まれ、私立明治義会中学校、同志社専門学校文学科、京都帝国大学文学部史学科西洋史科最近世史選科で学ぶ。ハワイに渡航し、日系紙『日布時事』記者、『布畦家庭雑誌』編集主幹、『大阪毎日新聞』特設通信員を務める。帰国後、京都帝国大学嘱託となり、内田銀蔵(国史学)や新村出(言語学)に師事した。同志社大学予科教授などをつとめた後、1925年九州帝国大学司書官となり、長年にわたり歴代館長を支えた。また、青年図書館員連盟に参加し、帝国学士院より研究助成を受けて図書館学を研究。図書館関係の論文を多数執筆。1939年京都帝国大学司書官に転じ、1942年関西学院大学図書館司書となる。 戦後は日本図書館研究会の創立に関わり、文部省図書館専門職養成講習講師として、天理大学や京都女子大学などで図書館学を講じた。点字図書館運動にも加わり、日本図書館協会顧問も務めた。「読書療法」という訳語を最初に作り、広めたのも彼とされる。主著に『近世日本文庫史』、『図書館の対外活動』など。彼の自筆稿や蔵書など研究資料は現在、同志社大学図書館に竹林文庫として所蔵されている。

目次

まえがき
序説 図書選択の予備的条件
A 近代図書館の特色
B 図書館とは何か その種類
C 図書館の構成要素
1 図書館資料
2 図書館専門職員
3 図書館奉仕
4 図書館の建物と図書館の経費
T 図書選択の基本的要件
A 図書選択の必然性と重要性
B 蔵書構成の計画性
C 図書選択の種類と位置
D 図書の選択は「法」か「方」か
E 図書の選択と図書館の民主性・中立性
U 図書選択の要素
A ALAのモットー
B 図書についての知識
C 読者に対する理解
D 図書資源について
V 図書選択の組織
A 図書選択の権威と教育委員会
B 図書(選定)委員会
C 図書館長の責任
D 図書の選択についての助言(advice)
1 価値理論と要求理論
2 図書館職員の助言
3 図書館職員以外の協力
W 図書選択の中心問題
A 「最もよい読みもの」とは何か
1 意義と特質
2 一般的原則
3 問題の図書
B 読者についての分析
1 地域社会
2 読書の要求とその価値
3 要求の分量(volume)
4 要求の価値と分量との相関性
5 要求の種類(variety)
6 読者のための図書選択方針
C 図書資源の経済的・効果的利用
1 図書館の予算と図書費
2 外部の図書資源
3 図書費使用の弾力性
X 図書館の種類と図書の選択
A 問題の困難性
B 公共図書館の図書選択
1 小公共図書館
2 大公共図書館
3 中位の公共図書館
C 学校図書館の図書選択
D 図書選択の目標
E 図書選択の過程と一般方針
1 図書選択の過程
2 図書選択の一般方針
Y 図書の評価による図書の選択
A 図書評価の基準
1 評価のための読書
2 図書の選択と書評
B 著者についての評価
C 出版社についての評価
D 図書の形態による評価
1 版(edition)と刷(impression)
2 製 本
3 図書の内部配列
4 図書の価格
Z 伝記書を選択するときの知識
A 伝記とは何か
B 伝記の種類
C 伝記の著述
1 主題の重要性
2 伝記の真実性
3 伝記の権威
4 伝記の記述
[ 図書の淘汰と蔵書の更改
A 図書選択の評価
B 図書の淘汰
C 図書淘汰の必要と理由
D 図書の別置と疎開
E 淘汰する図書の種類
F 蔵書の更改
\ 図書選択者の資格・能力・特性
A ライブラリアンシップとは何か
B 一般教育と専門教育
C 図書館の経験
D 図書選択者のパースナリティー
参考文献
索 引

本書より抜粋

どんな種類の図書館においても、図書は必ず選択しなければならないとすれば、図書の選択は、まず図書館のとりあげる最初の仕事であって、図書館の他の常務――実務(library routines)――に、先だつものである。すなわち図書館における図書選択の位置は、図書の注文・受入・分類・目録・配架・閲覧・貸出・弘報活動に先行するものである。

図書の選択に対して、街の検閲官的態度をとる個人なり集団なりが、図書館に監視の目を光らせていることを覚え、図書の選択者は堅い信念と、強い説得力と、人をそらさぬ世才を身につけて、いつでも、彼等の攻勢に対応する用意がなければならない。

不道徳であるとか、反道徳であるとかいう理由から、図書を排斥し非難する人々がある。しかしその不道徳といい、反道徳というのは何を根拠とするのか。誰が決定するのか。図書の選択者は、倫理・道徳についての権威者ではない。図書が読者の心理に及ぼす影響は、誰が判定することができるのか。読者にある種の結果をもたらす動因は、非常に多種多様である。図書館は道徳を教えることをしてはならない。図書館は図書を備えつけるが、それらの図書は、読者自らに道徳を学ばさせる助けとなる手段であり、道具なのである。

民主国家においては、思想および良心の自由と、信教の自由が保障され、何人もこれを侵すことはできない。また言論・出版その他一切表現の自由も保障され、検閲をすることは許されない。図書館は、一般公衆の支持による超党派的機関であり、図書館職員は、不逓不党、公正な態度でなければならない。図書館はプロパガンダの機関ではない。あらゆる意見が、そこに集積されていなければならない。

あらゆる種類の図書館について、図書の選択を、組織として研究し観察してみると、図書選択の最終の権威は、常に図書館の財源と結びついていることを見出すのである。それは一般に、図書館が民主化されて、地域社会の実情に即した方針・計画を樹て、自主的な運営方法を講ずることが期待されるばあいに、これら両者の関係は、常に緊密に提携しているからである。しかし実際には、図書選択の最後的権威が――すなわち図書館を支持し、その経費を負担する納税者の意思が、選択される個々の図書に働きかけているのではない。そこで、図書選択の権威は、どのように代表されているかを跡づけてくると、いずれのばあいにも、その直接の責任をとる図書選択者に到達するのである。

図書の選択は一つの目標に向かっての一種の技術であるが、図書選択者のうちに消化された知識と訓練と経験とが、その特性を通じて一つの結果として現われてくるのである。それは図書の選択者にとって限りない喜びであるが、同時に、それはまた「最もよい読みもの」が最も多くの人々に奉仕する喜びとなるのである。

「日本近代図書館学叢書」の刊行にあたって

インターネットの普及によって情報の発信・入手が容易になり、ネットワーク化が加速度的に進んでゆく現代。このような時代の中、図書館はどこへ向かえばいいのか。知の集積かつ共有の場としての図書館の専門性とは何か。
日本図書館協会が「日本文庫協会」として設立されてから一二五年、『図書館雑誌』の創刊から一一〇年である二〇一七年を迎えるにあたって、日本の近代図書館の創成期や発展期を担った先人たちの名著を繙くことは、図書館の「いま」と「これから」を見据えるために必須の作業であることは疑いを容れない。
本叢書がこれからの図書館の発展に寄与することを願ってやまない。
(「日本近代図書館学叢書」刊行委員会)
 「日本近代図書館学叢書」のパンフレットはこちら→PDF(969KB)

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